むかしむかし、三谷三郎池にはいつごろから住みついたのか母と子の”蛇”がいました。
母親の”じゃ”は身体がとても大きいので、三つの谷にまたがる三郎池でもきゅうくつでし
た。ある日つつみでひるねをしていた子供の”じゃ”は、西の方に満濃池という大きな池が
できたという村人の話を聞きました。さっそく「お母さん、西の方に満濃池というところが
あって、たくさんの水があるそうですよ。」とすすめました。それではと母親の”じゃ”は、
あるあらしの夜、たつまきになって西へ飛んで行きました。
それからしばらくたったある春の日、子供の”じゃ”がつつみであそんでいました。村の
子供たちがやってきて、「三谷三郎に”じゃ”がおるおると、大きな”じゃ”げな、うそじ
ゃげな、わぁーい。」と、子供の”じゃ”をとりかこんではやしたてました。子供の”じゃ”
は母親がこいしくなり泣きだしました。くやしくなった子供の”じゃ”が子供たちの中へと
びこもうとしました。子供たちは「うわぁー」と大声をあげて逃げだしました。その時です。
うしろのたかーい、たかーいところから「坊や、坊や」というなつかしい声が聞こえてきま
した。そこにはりっぱな竜になった母親のすがたがあったのです。それからは、母と子は三
谷三郎池でいつまでもしあわせにくらしたそうです。